お手本になるバイオリニスト

以前、ブログで僕の好きな演奏家をご紹介したことがありましたが、今日はバイオリンを演奏するのにお手本になる弾き方をしているバイオリニストを選んでみました。

ここで勘違いをしてはいけないのは、好きなバイオリニストが必ずしもお手本になるとは限らないということです。

以前ご紹介した僕の最も好きなバイオリニストはイツァーク・パールマンということをお伝えしたと思いますが、彼はとてもバイオリンを自由に使いこなして心に響く音で歌える素晴らしいバイオリニストです。

しかし、良く聞くと発音は汚い音を発していたり、感情的になって音が不安定になることもあり、あまり基本に忠実というわけではないと思います。

また、上手さでいえばヤッシャ・ハイフェッツが有名ですが、彼もテクニック的には神業的なものをもっていますが、弓を弦にぶつけたり、音をすっ飛ばしたりして雑な一面があり、あまりお手本にするようなバイオリニストではないように思います。

美音で有名な、ジーノ・フランチェスカッティやアルテュール・グリュミオーの演奏はとても美しく僕も大好きなのですが、感情的になってボウイングが雑になることがしばしばありお手本にというとちょっと違う気がするのです。

 

では誰がお手本に向いた演奏をしているのか。

僕は第一にシュロモ・ミンツを挙げたいです。

彼の冷静で超正確なボウイングはいつ聞いても感激してしまいます。

僕が1990年にNHK交響楽団と共演したベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を録画したこの演奏はまさに完璧です。

この演奏はかなり昔にプロのオーケストラで演奏している友達と一緒に見たこともあり、彼も絶賛していた動画です。

よろしければご覧ください。(弓が全然ぶれなくて上手く体重を使っているところにも注目してみてください)

ミンツは今も現役で演奏活動していますが殆どこの若いときと変わらず物凄い音で演奏していますね♪

 

次にお手本にできるバイオリニストはというと、僕はヘンリク・シェリングを挙げたいですね。

彼は教育家としても有名ですが、やはり一音一音とても丁寧に演奏していることがわかりますね。

ビブラートもどちらかというとゆっくりで考えてかけていることがわかります。美音系のバイオリニストは惰性でかけているような速度の速いビブラートが多い気がします。

本来ビブラートは早くも遅くもかけられることが望ましいですね。

シェリングはいつでもとても丁寧な演奏をしますが、ちょっと独特な歌いまわしになることもあり結構好き嫌いが分かれるかもしれませんね。

しかし、彼のバッハ、ベートーヴェンは文句なく素晴らしいと思います。

 

チェコのヨゼフ・スークも結構模範的な演奏をすると思います。

彼はビブラートも速くとても美しい音を奏でますがやっていることは楽譜に忠実で殆ど余計なことをしていないと思います。

シェリングと同様にとても考えて演奏していて、決して惰性で弓が動いたりはしていないと思います。

彼の演奏するモーツァルトなどはとても美しいのですが、決して特別なことをやっているわけではなくシンプルに楽譜通りやっているだけなのです。

 

シュロモ・ミンツ、ヘンリク・シェリング、ヨゼフ・スークに共通することは基本に忠実で、とても丁寧で冷静に演奏していることです。